【第101話】失意の檻

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「――ということだ、司令官殿?  おっと、『元』だったか……俺としたことが」 マスキュリンは怒りでわなわなと震えるヴァーミリオンに向かい、にっこりと笑う。 途端、ヴァーミリオンは血相を変え、親書をびりびりと破り捨てた。 「このクソアマがァアアアアア……!」 先程までの冷静さを欠いたヴァーミリオンは我を忘れ取り乱し、先程机の上に置いた剣を引っつかみ、マスキュリンに向かい刃を抜く! 「きさま…!」 アランがすかさずヴァーミリオンとマスキュリンの間に割り込もうとする……が、それをマスキュリンは再び制した。 「よい、アランよ。お前が相手をするまでもない……」 そう言うとマスキュリンはヴァーミリオンに向き直る。 「――仮にも王族の者に刃を向けるということがどういうことか……解らぬわけではあるまい?」 己に向けられし刃に畏れなど全くないというようにマスキュリンは不敵に嗤う。 だが、怒りで我を忘れているヴァーミリオンは全く引こうとしない。 マスキュリンが手のひらを上に掲げる、そこへアランが自身の腰に挿してある『もうひとつの剣』を抜き、渡した。 それは、柄に大きな手甲が付いている、湾曲した片刃の刀 。 「――久しぶりだな、この剣を抜くのは…」 マスキュリンはその刃を確かめるように指先でそれにそっと触れる――ツゥ…と指先から赤が出たのを確認し、ぺろりとその赤を舐め、高々と言い放つ! 「さあ…来い、下賎者。 俺に剣を向けたこと……すぐに後悔させてやる」 マスキュリンは左手に握りしめたサーベルの先をヴァーミリオンに突き付けた。
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