【第101話】失意の檻

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勝負は一瞬にして決した。 ヴァーミリオンの刃が風を叫ばせ、振り下ろされたその刹那、対する者の姿が視界から消えた。 次の瞬間、ヴァーミリオンは首元すれすれの皮膚に冷たい物が触れる感覚に身を強張らせた。  ――それは、自身の背後に回り込んだマスキュリンによって突き付けられし刃… 動けばただそれだけで頸動脈をかっ切られることが容易に想像ができた。 ヴァーミリオンは微動さえも許されない。 「敗れた敗因は、俺が女だからか? ……それとも俺が王族だからか?」 背後から囁かれるその声は場が静寂なもあり、よく通り、響いた。 「……くそが…っ」 その場を動くことも許されず、ヴァーミリオンは自らの背後に立つマスキュリンの姿を捉えるべく瞳を端に寄せた。 「お前が弱いからだ、下賎者。 お前レベルの者などいくらでもいる……!」 嘲り嗤うその通る声の奥で、廊下から何者かが走ってくる音が響いてくる。 そしてその音はこの司令室のドアを破り、中に入り込んできた。 「マスキュリン様、たった今到着致しましたクロスナイツ部隊で――」 入ってきた者…マスキュリン側の増援部隊・隊長は今、その部屋で起きているその光景に息を呑んだ。
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