【第101話】失意の檻

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マスキュリンは表情一つ変えもせず、走り込んできた部下の姿を捉える。 「……『ターゲット』の者はいたか?」 声以外の意識はずっと左手に握りしナイツサーベルに向けたままだ。 その主(あるじ)の姿に目を奪われていたその隊長格の男は掛けられたその声にハッと我に返り、報告を続けるべく口を開く。 「はっ、ターゲット発見…確認しております!」 「そうか……なら、城に連行し牢に繋いでおけ」 「はっ」 敬礼した男は後続の者に命を下すと、自らはゆっくり部屋に進み入り、未だ微動もできないヴァーミリオンの身柄を取り押さえた。 「……ご苦労」 マスキュリンがナイツサーベルを引くと、まるで見計らったように後ろに控えていたアランがそれを受け取った。 身柄を拘束されたヴァーミリオンはまるで野獣のような獰猛な瞳をマスキュリンに向ける。 それをにやにやと愉しそうに嗤っているマスキュリンは悪魔の笑みと宣告をヴァーミリオンに言い渡した。 「喜べ、コビィーナのために用意していた処刑台の新しい使い道が出来たぞ」 王族への謀反はその理由などを問わず、有無を言わさず死罪……ヴァーミリオンの運命はマスキュリンに隠した牙だけでなく、刃を抜き去ったその瞬間から決まってしまった。  
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