【第101話】失意の檻

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「………!!」 目の前にあらわになった『それ』を見て、マスキュリンは一瞬目を見開いた。 そこにあった物とは、アメルタとドラクスの首から上の頭部……  瞳孔は開いたままに、寄せられた眉、半開きになった口許からは凝固した一筋の赤が射されている。 マスキュリンの隣にいたアランは全く動じることもなく切り離された2人の頭部にそっと歩み寄った。 右手で十字を切ると、開かれたその瞳を掌(てのひら)でスッと撫でおろした。 瞳が閉じられたのを確認すると、アランはヴァーミリオンに向き直る。 「これは死者……いや、戦士に対する冒涜(ぼうとく)行為に他ならない。 一体、何のつもりでこのような真似をするのか」 アランの怒りは、大声で叫ぶようなあからさまな怒りではない……だが、その煌々と沸き上がるその静かなる怒りの炎を前にした大低の者は、恐怖し逃げ出す程の力を持っていた。
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