パラサイト

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愛称「季節外れの転校生」 その響きはあたしの 平凡に埋もれた好奇心を これでもかというくらい 執拗にくすぐった。 新しい全く知らない人間が 自分たちの生活に踏み入ってくるのは、 あたしだけでなく 他の同級生たちにとっても大事件のようで、 一気にこの転校生の話で持ちきりになった。 転校生は女の子で、 聞いたこともないようなところから 転入してくるそうだった。 うちのクラスに その子が転入して来ないかと期待したが、 残念ながら3つ離れたクラスに 転入するらしかった。 転校してくる日に 絶対クラスまで見に行こうと決意していたのに その提案はあっさりと 香代と麻弥に切り捨てられてしまった。 「めんどくさーい。」 えーっ!と、大袈裟に喚いて お願いお願い。と 化粧を直している 麻弥の腕にしがみついたら ラインが歪む!と本気で怒られてしまう。 そんな時、 ちょうど転校生の偵察に繰り出していた男子が帰って来て、 香代と麻弥にそちらへ追い払われてしまった。 もし此処で彼らの口から 「転校生、凄い美少女だったぜ!」 みたいな返答が返ってくれば 二人も乗り気になるかもしれない。 そんな期待を込めて、 意気揚々と彼らに転校生の感想を聞きに脚を向けた。 しかし、 あたしの縋るような願い儚く、 高く打ち上げられた想いは 見事に撃沈した。 「すんげえ暗いオタクみたいな奴。あれはきつい。」 (あぁ、神様。あたしはいつになればこの退屈な日々から逃げ出せるのでしょうか。) 暇人の嘆き然り。 幸福者の贅沢な悩み然り。 傾く夕日に染まる校舎から、 きらり。と一筋の光が瞳孔を焼き付けた。  
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