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「サカエ、……暇だな」
サカエの返事を待たずに先に用件をいう。
「アオイ、……いつものやるか」
そしてこれがいつもの流れ。見張りの時は大体暇だから、僕らは訓練と称した遊びをする。
先に相手の動きを止めた方が勝ち。もちろん町を破壊するような大きな魔法は使えないし大きな音もたててはだめ。対戦成績は132勝149敗と負け越している。
だけど、今日は絶対に負けられない。
「今日勝てば150勝。ソウカちゃんの手料理だ」
サカエとの約束でサカエが150勝したら、僕の妹であるソウカの手料理を食べに来ることになっている。
50勝の時はサカエを紹介したし、100勝の時は家に遊びに来ることだった。サカエは妹を狙っているらしい。確かにソウカは可愛いし家事だってバッチリだし、料理も上手で、誰にたいしても優しいから惚れたってしかたないことだけど、サカエにはソウカは渡さない。そして、サカエをソウカに近づけさせないために僕は負ける訳にはいかないんだ。
「行くぞっ!!」
サカエの声と共に遊びが始まった。
サカエは当然の様に僕への距離を縮めてくる。魔法を得意とする僕にとって接近戦は苦手分野だ。281戦もしていれば相手がどう動くかなんて大体予想がつく。サカエの武器は剣、僕はメイス。距離が縮まれば圧倒的に不利。
古代魔法を唱える暇すらない、腕を振るって風の刃を出す。腕輪の力で風を起こし刃を飛ばす魔法というより技の一種だ。
サカエはそれを予測していたのか上に飛んでそれを避けた。それと同時に僕への距離を一気に詰めた。
汗が頬を伝う。マズイ、今日のサカエは気合いが違う。
サカエが剣を横に薙ぐ、足を狙われた必死に避けようとしたのが裏目に出る。片足になった所で残った足に剣の腹があたる。あまりの痛さで地面に転がる。
気がつくてサカエに剣を眼前に突き着けられていた。
それがサカエの150勝目を告げた。
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