裏町

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「責任を取らされて一緒に追い出されたよ」 「僕はそんな祖父を知りません」 「あれから源次郎さんもすっかり人が変わってしまった。私も再三注意はしたんだが」 「先生はその時……」 「私も一緒さ。この事務所を立ち上げたのもその時からだ」 「申し訳ありません」 「君が謝る事じゃないさ。幸太郎さんの本性を見抜けなかったのは私も同じだから」  藤堂氏は『そうそう』と言って、奥の間から一枚の書面を持ってきた。 「これは私が預かっていた源次郎さんの遺書だ。見るかね?」 「失礼して拝見します」  弁護士が預かっていたともなれば遺書としては正式なものだ。  遺産がどうのとか財産がどうのとかではない。  源じいの名で署名されたその遺書には、一言『佐野幸太郎の正体を暴け。復讐には復讐を。頼んだぞ』とだけ記されていた。  まるで僕が遠い将来、ここに来てこの遺書を見るのを予見していたかのような文面だ。  日付を見ると、それは三十年前のものだった。
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