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「先生ですか?すみません。朝から連絡が取れないんです」
秘書の心配をよそに藤堂氏は行方不明のようだ。
まさかとは思うが、さすがにあの男と失踪の関係はないだろうと着けたテレビから流れてきたのは、河川敷で発見された藤堂氏の遺体のニュースだった。
電話の向こうでは事務所にいくつかある電話機が同時に鳴り響いている。
これは一刻の猶予もない。
恐らく次は僕の番だ。
僕は慌てて電話を切って実家を飛び出すと、桂子のアパートに駆け込んだ。
このままだと彼女や子供にも被害が及ぶ。
急いで荷物を纏めて、走り書きを残すとアパートを飛び出した。
残念だがこれでおさらばだ。
銀行で下せるだけの現金を引き出し、その日のうちに大阪まで逃げた。
どこまで逃げ遂せるかは解らない。
だがこのまま消されるのも癪だ。
僕が何をしたと云うのだ……
これに兄も加担しているのだとすれば、僕はあの二人を絶対に許さない。
これは源じいの復讐、弔い合戦だ。
残してきた母の事も気になるが、まずは我が身の心配をしよう。
カプセルホテルに潜り込んだ僕は、祈る気持ちで眠りに付いた。
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