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この半年、あの男が暗躍している様子はなかった。
ニュースと云うニュースは全てチェックしていたが、どうやら被害者はあの弁護士ひとりで済んだらしい。
さすがにこちらに現れる気配はない。
だがこうしている間にも、あの男は恐らく悪事に手を染めている。
僕の使命……それは源じいの無念を晴らす事。
その為にはいつまでもここで安穏とした生活を送っているわけにはいかない。
どこかでチャンスを伺って、こちらから打って出なければ、何の解決にもならない。
幸い、今は被害が広がっていないだけで、いつまた僕の周りの人間が巻き込まれるか分からないのだ。
直接殺されたわけではないが、父も源じいも同様に被害者だ。
あの男の懐に飛び込む方法
僕は半年、そればかりを考えていた。
門前払いで済めばいい方だ。
下手すれば命がない。
そんな危険な相手に、のこのこと乗り込んで行けるわけがない。
結局、この答えが出るまで、半年も費やしてしまった。
顔を変える
はやり僕にもこればかりは抵抗があった。
整形で顔を変え、名前を変えて潜り込むなど、どこぞの探偵じゃあるまいし、そんなの絵空事の世界だ。
打ち消しては考え、打ち消しては思い出し、悩みに悩んだ挙句、他に答えは出なかった。
僕は覚悟を決めた。
祖母に別れを告げると、僕は日本を離れ、タイに向かった。
実はここで別人に成り替わる手筈が整っている。
残りの貯金を全て支払い、その日僕は別人『小池翔太郎』に生まれ変わった。
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