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僕を知る人物はもう誰もいない。
世界は小さく、僕を中心に回っている。
肩書に慣れる為に、さらに半年を要した。
いよいよ小池翔太郎のデビューだ。
東京に戻って、誰とも接触せずに過ごした日々は、全てあの男の為。
念の為、桂子の働いている店まで行ってみたが、僕だとは気付いていないようだ。
大丈夫
あとは佐野建設にどうやって潜り込むか、だ。
タイのマフィアに支払ったのは何も整形費用だけではない。
僕自身、別人になる為の肩書も含めての一切合財だ。
中卒の僕が、今やマサチューセッツ工科大卒になっている。
こんな肩書、普通に接していればすぐバレそうなものだが、それも半年の間にちゃんと詰め込んだ。
既に知識も完璧と言っていい。
尤も深く突っ込まれて返せるほどの知識はない。飽く迄表面的な知識限定だ。
この歳になって、初めてまともに勉強と云うものをやった。
もう後戻りは出来ない。
僕の人生は、あの男への復讐の為だけにある。
僕はまず、佐野建設の子会社の面接を受けるところから始めた。
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