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肩書にものを言わせて幹部候補として潜り込めたのが幸いしたのか、そのチャンスはすぐにやってきた。
本社と合同の大きなプロジェクトが回ってきたのだ。
ここで人導指揮を取ってその実力を見せ付けてやれば、本社からも一目置かれる。
その答えはすぐに現れた。
本社から引き抜きの話がきたのだ。
これで佐野建設に堂々と潜り込める。
いよいよあの男と直接対決だ。
僕は会社の前に再び立った。
あの日、門前払いで追い出されてから既に二年の月日が流れ、佐野幸太郎は既に会長に退き、兄が社長に就任していた。
敵があの男であろうと兄であろうと、叩き潰すのみだ。
兄は本当に自分の存在を知っているのかすら、状況からして怪しい。
かと言って自分の身の上を明かすわけにはいかない。
僕は辞令を持って社長室へと向かった。
「失礼します」
「どうぞ」
兄は想像したより腰の低い男だった。
確かに兄だ。父の面影がある。
「辞令を持ってまいりました」
「小池さん。本社でもその実力を発揮して助けてください。お願いしますね」
「はい。存分に」
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