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こんな僕に、二歳違いの兄がいると聞かされたのは、源じいの葬式の時、僕が中三の時だ。
第二次反抗期真っ只中の生意気盛り。
日課だった源じいの迎えさえ『だるい』の一言で悪友と遅くまで何するでなく公園でぶらぶらしている方が楽しかった。
葬式の席で、普段は見た事も聞いた事もない親戚に囲まれ、両親の横でだるそうにしている僕に父の従兄と名乗る男が近付いてきた。
「君、将太君だね?いやぁ大きくなって」
はっきり言って知らない男だったが、僕は軽く会釈した。
「君のお兄さんの龍太も会いたがっていたよ。今日は受験勉強で来れなくて残念だったね」
唐突に『兄』と言われてもピンとこなかった。
ただひとつ言える事は、今目の前にいるこの男は、僕の知らない真実を知っていると言う事だ。両親すら話してくれなかった事実を、この男は知っている。
葬式の後、両親を問い詰めた。
暴れられるだけ暴れて、一段落着いた頃、父が席を外した瞬間、母が泣き出した。顔を両手で覆い、声を挙げて泣きじゃくる母を残し、その日以来、父は二度と戻ってはこなかった。
僕は高校進学を諦め、少しでも家計の助けになればと、毎日必死に働いた。
母はあの日から人が変わったように日々、窓から外を見ながらぼーっとしている。
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