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事務所に入る早々握手をされ、僕は応接室に通された。
「君が源次郎さんのお孫さんだね?そのうち現れると思っていたよ」
「そりゃどうも」
父の友人のはずが、源じいの名前が先に出て驚いた。
「私はかつて佐野建設の顧問弁護士だった。ここに来たと云う事は、言っている意味が解るね?」
「だったら教えてください。今、あそこで社長をしている人物、佐野幸太郎の事を」
「彼は君の父上の兄だ。尤も腹違い、君の父上は源次郎さんの妾の子。幸太郎さんは実子だ」
「そうだったんですか……」
「君は何も聞かされてはいないのかね?」
「はい、何も」
「そうか。君の父上とは大学の同期。尤も学科は違っていたが、一般教養が一緒でね。同じサークルだった事もあって、古くから仲良くさせてもらっていたんだ」
「僕は父が大学を出ていた事すら知りません」
「無理もない。君が産まれる前に佐野建設から追い出されたのだから」
「源じい……祖父の部屋に残された書面には父が次期社長とありました」
「ああ、そうだ。幸太郎さんに追い出されるまでのたった二年間だけ、正次郎さんは社長だった」
「その時、祖父はどうなったんですか?」
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