第3章 愛しい人

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「幸、私はっ……」 「美穂子、俺の為に泣くな。俺が悲しい」 「そうだね…。ごめんね」 「美穂子、ゴメン」 俺はどうしていいかわからなかった。 頭がぼぅっとして、何も考えられなかった。 「俺は、裕二に……」 頭がクラクラする。 「裕二に……」 考えるより先に足が動いた。 ベッドから降りる。 倒れた時の格好で、裕二の家に行く。 「裕二」 俺は呟く。 「幸!熱は……」 母さんの前を平然と通り過ぎる。 階段を降りる。 俺は裸足のまま外へ出た。 「幸!待って!!」 後ろから美穂子が呼ぶ。 でも、止まれない。 真っ直ぐ。 車が通っていない道路を横切る。 裕二。 裕二。 裕二。 なにかにかられたように、俺の一番の親友の名を頭の中で呟く。 裕二。 裕二。 …美穂子。 美穂子? ピタリ、と足が止まる。 「美穂子……」 俺は、愛しい人の名を呼んだ。 「美穂子……!」 声が震えてる。 俺はその場に崩れた。 「……美穂子………」 ポタリ。 涙が歩道のアスファルトに吸い込まれていく。 「美穂子!!」 俺は___
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