篭城の末

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その日、下ヒ城内は朝から騒がしかった。 宋憲、魏続、侯成が二万近くの兵と共に曹操に降ったためである。 これに対し、呂布はすぐさま諸将を集めて対策を練った。 「あの三人に従った兵は二万近くと聞きます…。これでは篭城を続ける我らが不利でしょう…。ここは曹操に挑むか寿春で再起を図るしかありませぬ。」 「下ヒを手放すのは口惜しいですが、張遼殿のおっしゃる通りです…。陛下、ご決断を。」 陳宮の言葉の後、諸将は一斉に呂布を見た。 「曹操に挑むぞ!あいつらだけは絶対に許さん!!」 呂布はそう言いながら荒々しく席を立った。 「陛下、お待ち下さい。」 「…張恭か。何だ?」 「あの三人を見逃して下さい。実は……」 恭平は夜中の出来事について話し始めた。 恭平が話し終えると諸将は後悔の表情を浮かべていたが、呂布は違った。 「ほぅ…。それでお前はあの様なことを…?」 「はい。」 「馬鹿者!それがあいつらの策だということに何故気付かぬ!!?」 呂布は怒鳴ったが、宋憲達の意志を知っている恭平は、ここで引き下がる訳にはいかなかった。 「策ではありません!陛下も何故、部下を信じられないのですか!?」 「裏切り者など信用出来るか!?」 「陛下のためを思ってしたことではありませんか!!」 「黙れ!!これ以上俺に刃向かう様ならその首叩き斬るぞ!!」 恭平が何か言おうとしたが、諸将が二人の間に割って入ったため、恭平はその場を後にした。 呂布は自分が座っていた椅子を蹴り倒すと、無言のまま戦の準備を始めた。
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