禁酒令

20/20

2820人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
本陣に戻った張遼は傷ついた恭平を兵に介抱させると、自分は呂布の元に向かった。 「張遼、張恭の様子はどうだ?」 「数本の矢を受けていますが、いずれもかすり傷の様です。」 「そうか。明日にでも陣を引き払うから準備をしておけ。」 張遼が下がると、呂布の側にいた陳宮が口を開いた。 「張恭殿には初めの戦が負けると分かっていました。それは不問にするのですか?」 「張恭は敗北の責任を取って曹操軍に向かった様だが、それが幸いして二万近くの兵が退却出来た。だからそれ以上は言うな…。」 「…申し訳ありませんでした。」 その夜、呂布は諸将と共に食事をとっていた。その席には治療を終えた恭平の姿もあった。 「陛下、もしよろしければこれもお召し上がり下さい。」 そう言って兵に猪料理を運んで来させたのは侯成だった。 「これはどうしたのだ?」 「はっ。陣内に猪が迷い込んだため、陛下に献じようと思い仕留めました。」 だが、猪料理が目の前に運ばれると呂布は眉をしかめた。 呂布の目の前には酒が置かれていたのである。 当然、侯成も呂布が禁酒中だと知っているが、敗北続きの呂布を気遣ってしたことである。 だが、呂布はこれに激怒した。 「お前は俺を愚弄しているのか!?」 「いえ、決してその様なつもりでは…。」 侯成は必死に弁明するも、呂布は聞く耳を持たなかった。 「黙れ!貴様の様な奴には処罰が必要だ!」 呂布はそう言って剣を抜いた。しかし、諸将の誰もが止めに入ったため呂布は渋々剣を納めた。 「こいつを百叩きにしろ!」 呂布は怒鳴る様に言うとそこから去っていった。場内が静まる中、恭平はその様子を青ざめた表情で見ていた。 その後、百叩きの刑は執行され、その間、侯成の悲痛な声が響き渡っていた…。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2820人が本棚に入れています
本棚に追加