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本陣に戻った張遼は傷ついた恭平を兵に介抱させると、自分は呂布の元に向かった。
「張遼、張恭の様子はどうだ?」
「数本の矢を受けていますが、いずれもかすり傷の様です。」
「そうか。明日にでも陣を引き払うから準備をしておけ。」
張遼が下がると、呂布の側にいた陳宮が口を開いた。
「張恭殿には初めの戦が負けると分かっていました。それは不問にするのですか?」
「張恭は敗北の責任を取って曹操軍に向かった様だが、それが幸いして二万近くの兵が退却出来た。だからそれ以上は言うな…。」
「…申し訳ありませんでした。」
その夜、呂布は諸将と共に食事をとっていた。その席には治療を終えた恭平の姿もあった。
「陛下、もしよろしければこれもお召し上がり下さい。」
そう言って兵に猪料理を運んで来させたのは侯成だった。
「これはどうしたのだ?」
「はっ。陣内に猪が迷い込んだため、陛下に献じようと思い仕留めました。」
だが、猪料理が目の前に運ばれると呂布は眉をしかめた。
呂布の目の前には酒が置かれていたのである。
当然、侯成も呂布が禁酒中だと知っているが、敗北続きの呂布を気遣ってしたことである。
だが、呂布はこれに激怒した。
「お前は俺を愚弄しているのか!?」
「いえ、決してその様なつもりでは…。」
侯成は必死に弁明するも、呂布は聞く耳を持たなかった。
「黙れ!貴様の様な奴には処罰が必要だ!」
呂布はそう言って剣を抜いた。しかし、諸将の誰もが止めに入ったため呂布は渋々剣を納めた。
「こいつを百叩きにしろ!」
呂布は怒鳴る様に言うとそこから去っていった。場内が静まる中、恭平はその様子を青ざめた表情で見ていた。
その後、百叩きの刑は執行され、その間、侯成の悲痛な声が響き渡っていた…。
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