篭城の末

4/14
2820人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
「…私達は今後について話していただけですよ。」 宋憲は普段とは違う恭平に驚いてはいたが、すぐに表情を和らげて言った。 「それは曹操に降伏するための話し合いですか?」 恭平の唐突な一言で場は緊迫した。 「な、何故、我らが曹操に降伏せねばならんのだ!?」 宋憲はそう言ったものの、その表情は焦っていた。 「宋憲殿。こうなれば致し方ないが…。」 侯成はそう言うと、魏続と共に恭平へと歩み寄った。三人の腰には剣が差してある。 恭平も剣を差しているが、勝敗は目に見えていた。 「…このことは陛下にだけでも内密にしておいて下さい。」 「…え?」 恭平の目には頭を下げている侯成と魏続の姿が映っていた。 「実は一部の兵達に不安が広がっている様で、陛下を恨んでいると思われる私に反乱を持ち掛けて来たのです。」 「それなら、陛下に報告して反乱兵を捕らえればいいことではないですか?それが出来ないのは、あなた方も降伏するつもりだからではありませんか?」 「張恭殿、それは誤解です。反乱兵と言えど、元は味方の兵です。それを斬ったとなれば、ますます兵達に不安が広がってしまいます。」 「ならば魏続殿には裏切りを正当化する理由でもあるのですか!?」 恭平はこの時、初めて怒りをあらわにした。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!