篭城の末

7/14
2820人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
全ての準備が整った頃、城内には呂布、陳宮、曹性の姿があった。 「陳宮、お前は臧覇殿の元に向かえ。」 実は恭平が去った後、陳宮は北海と寿春からの挟撃することを考え、曹操との戦を回避する様に進言していた。 「陛下、それでは私もご一緒させて下さい。」 「いや、曹性は俺について来い。その代わりと言っては何だが…張恭を連れて行け。」 「それでは戦力に偏りが……」 「承知致しました。」 曹性が何か言おうとしたが、陳宮の言葉によって遮られた。 曹性も陳宮が承諾しては何も言えないので、そのまま呂布に従った。 「それでは陛下、我らは先に北海へ向かいます。」 陳宮がそう言って一礼すると、隣にいた恭平は呂布を見ることもなく、黙って礼をした。 「あぁ…。」 呂布は恭平を見ながら言った。 陳宮率いる二万の軍が出発した後、呂布は何か大きな決意を持って兵達の前に立った。 「俺達はこのまま曹操軍に戦いを挑む!!」 呂布の言葉に兵達は動揺し、場は騒がしくなった。 「陛下!二万では曹操に敵うはずがありませぬ!」 呂布を必死に止めようとしたのは曹性だった。 「分かっておる。俺は宋憲らが憎くてこんなことを言うのではない…。ただ、曹操に一泡噴かせてやりたいだけだ!」 呂布は曹性に向けていた顔を戻すと、話を続けた。 「十万の曹操軍が相手だ!曹操に降伏しようが俺の元を離れようがお前達の好きにしろ!俺に従う者だけここに残れ!!」 しかし、城を出る者は誰一人としていなかった。 「陛下!我らは最後まで陛下に付き従います!何なりとお命じ下さい!」 張遼の言葉の後、兵達からは大きな雄叫びが上がった。 「陛下、私もご一緒させて頂きます。」 曹性の言葉に、呂布は全体を見渡しながら小さく頷いた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!