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それは、何の前触れもなくやって来た。
「失礼致します!」
一人の兵士が中に入ってきて一礼すると、呂布に駆け寄り書状を渡した。
「………。これは…。」
呂布が戸惑っている。
「…何と書かれていたのですか…?」
陳宮の声で我に返った呂布は、一呼吸おいてこう言った。
「寿春(ジュシュン)の袁術殿が死んだ…。病死だそうだ…。」
呂布のその一言に諸将は驚き、言葉を失う者もいれば、今後について話し合う者もいた。
だが、一番驚いたのは紛れも無く恭平だった。
(袁術が…死んだ……?)
袁術は劉備軍によって敗走し、その途中病死するのだが、その話しは呂布が死んだ後のことなのである。
(まさか、歴史が歪んでる…?)
恭平のこの考えは、次の呂布の言葉で確信に変わった。
「それだけではない。本来、袁術殿の後継者となる袁燿(エンヨウ)殿が、皇帝の地位を俺に譲るとのことだ。」
皆、驚きの余り声も出なかった。場は静まり返り、ただ、呂布を呆然と見ていた。
「あの…、それは呂布様が皇帝になる、ということですか…?」
最初に声を出したのは恭平だった。
「皇帝…。俺がか…?」
「それだけではありません。袁術殿の軍や領地も全て呂布様のものになります。」
恭平と陳宮の言葉により、静まり返っていた場が一気に騒がしくなった。
「我らの君主が皇帝になるぞ!」
「これなら曹操と対等に戦える!」
騒がしくなっていくと共に呂布の目は大きく見開き、決意を固めた声で叫んだ。
「俺は皇帝になる!!」
建安2(197)年。袁術で滅ぶはずだった『成』は、こうして呂布に受け継がれることとなった。
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