序章ー真白い季節にー

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 建物の中は、古びた外観の割りにはしっかりとしていた。  壁や床、天井などの至る所に多少の亀裂は入っているものの、ひどく崩れている箇所は殆どなかった。  まるで誰かがここで暮らしているような錯覚を、レナは起こしてしまいそうな不思議な感覚だった。  長い通路を抜けると、今度は地下へ降りる階段が目の前に現れた。  レナは迷うことなく、その階段を降りた。  階段は薄暗く、足元がよく見えなかったが、踏み外したりはしなかった。  レナは自分の勘を頼りに、一段一段慎重に降りて行った。
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