序章ー真白い季節にー

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 無我夢中で走り続け、教会の出口が見えてきたと同時に、今し方自分が走ってきた道を振り返った。  いつもならば楽しい筈の場所も、こうしてみると薄気味悪い場所にしか見えなかった。  レナは、前ばかりに気を取られているせいか、背後に近づく何かに気付く様子もなく、じっと目の前の暗闇を凝視していた。 「……おい」  軽くレナの肩に手を乗せ、声を掛けたつもりが、レナは大きく体を震わせ、ゆっくりとした動作で背後を振り返った。  そして、見覚えのある黒と紅にこの世のものとは思えない程の悲鳴を上げ、青年をありったけの力で突き飛ばした。
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