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そこは一面、青と白しかない空間だった。地面や空も全く分からず、ただ二つの色だけが支配していた。
「…またか……ここは…どこだ…」
その空間の中心に一人の男性が立っていた。栗色の長髪をし、慣れたような態度で男は呟いた。
『………わ…の……から………こ………えよ…』
不意にどこからか低い男の途切れ途切れな声が響いていった。
「誰なんだよ!?俺を呼ぶ奴わよ!?」
声を聞いた男は辺り構わず大声で怒鳴り散らすように叫んだ。
『……れは……お…え……じ……な…』
ガバッ!!
男はその場で起き上がった。目の前の視界には二色の空間ではなく、見慣れた自分の部屋が写っていた。
「ハァ…ハァ…ハァ…またあの夢かよ……一体何なんだよ…」
男は息を整えながら呆れるように呟いた。
「…イグラス!起きたか?そろそろ朝稽古を始めるぞ~」
「分かってるよ、父さん!」
不意にドアの外から声が聞こえ、男は返事を返した。男はすっとベッドから降り、着替えを済まして部屋を出た。出た先にはリビングが広がっており、玄関付近に同じ栗色の髪をし、手に二振りの木刀を持った父がいた。
「無理はしないようにね?」
「はいよ、母さん」
キッチンで料理をする金色の長髪をした母が優しい声で言った。男もそれに応えるかの様に優しく応えた。そして男は父と共に家を出た。
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