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カンッ…!カンッ…!
とある山中から乾いた音が響いていた。山中の中腹部に一筋の白い煙を出す木製の家が建っていた。
カンッカンッ…!
家の前で再び音が響いた。家の前には栗色の髪をした男と、同じ栗色の長髪をした青年が立っていた。二人の手には木刀が握られており、稽古をしていた。
カァァン…!!
ふと大きな音が響いた。青年が持っていた木刀が地面に落ち、男の木刀が青年の顔近くに切っ先を向けていた。
「…父さん、強すぎだろ~…」
「当たり前だイグラス。そう簡単に勝ったら稽古にならないだろ」
イグラスの言われた青年は不機嫌そうな顔をしながら言った。一方父さんと言われた男、レーツェルは顔色を変えずに平然としていた。
「…チェッ…」
「今日はここまでにしよう。そろそろ朝ご飯が出来る頃だからな」
「は~い」
舌打ちをしたイグラスはレーツェルの言葉に返事をし木刀を拾った。二人は玄関のドアを開けて中に入っていった。
「お疲れ。丁度朝ご飯が出来たから準備して」
「流石ミリィ~。いつもてきぱきしてるな~」
「腹減った~…」
物音を聞いた女性が顔を覗かせ、金色の長髪が靡いていた。木刀を置いたレーツェルが関心した。イグラスは腹をさする仕草をして呟くように言った。
「その前に顔を洗ってね」
「分かってるよ母さん」
母さんと呼ばれた女性、ミリィの促しにイグラスは近くに置かれていたタオルを持って外にある水汲み場に向かった。
「…イグラスの調子はどう?」
「まだまだ。大分ましになってきたが、咄嗟の対応が遅いな」
イグラスがいなくなったのを見計らい、朝食をテーブルに置きながらミリィは尋ねてきた。レーツェルは厳しい顔をして答えた。
「…フフッ」
「な、何笑ってるんだよ?」
吹き出し笑いをしたミリィにレーツェルは困惑した。
「レーツェルも本当に父親らしくなったわねって思って」
「…そ、そういうミリィだってもう母親一色じゃないか…」
ミリィの顔には笑みが浮かんでいた。慌てたレーツェルは反撃するように言った。
「ありがとね、レーツェル」
そんなレーツェルを見ながらミリィは笑いながら礼を言った。
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