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「…父さん、母さん…そうやって、いちゃつくの止めてくれないか~…?」
「…!」
イグラスの声で我に帰った二人は慌てて準備に戻った。そんな二人を見て、イグラスは溜息しながら準備を手伝っていった。
(どうしてここまでくっ付きたがるのかが、分からないわ…)
心の中でそう呟いたイグラスだった。
「なぁ、父さん母さん」
「んっ?」
「どうしたの?」
食事を終えて休憩中だったイグラスは二人に声を掛けた。レーツェルは剣の手入れ、ミリィは食器の片付けをしていた。
「俺もそろそろ……旅に出たいんだけど…」
ピクッ…
イグラスの言葉に二人の手が止まった。
「俺も今年で十八だし…色々と世界を見てみたいんだ…」
イグラスの切実な望みが部屋に響き渡っていった。暫く、沈黙が続いた。
「……まだだ…」
レーツェルはそう、ただ呟いた。
「何でだよ!父さんと母さんも、俺くらいの歳でもう旅してたんだろ!」
そんなイグラスの言葉が部屋中に響いた。
「私達の場合はやむを得ない状況で旅をしてたの…イグラスの場合は例外じゃないわ…」
食器を片付け終わったミリィは静かに言った。
バンッ!
イグラスはテーブルを思い切り叩いた。
「俺はこんな山ん中でずっと暮らしてきて、もういい加減に我慢出来ないんだよ!!」
バタンッ!!
イグラスは早歩きで自室に入っていきドアを思い切り閉めた。
「イグラス!!」
レーツェルの怒りが籠もった声が響いた。暫くドアを見つめたレーツェルはドアから視線を外して溜息をした。
「誰に似たのかしらね…」
「知るか…」
ミリィの落胆した声で、レーツェルは怒り気味に呟いた。その時、
(……お主ら二人の息子だ。二人の性格が原因なのではないのか…?)
(…う、煩いぞ、ラスティ!)
(そ、そうですよ!)
不意に二人の脳裏から低い男性の声が響いたそれを聞いた二人は思わず焦って反論した。声の主はレーツェルに宿っている水の内精獣、ラスティだった。
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