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古い町並みに並ぶ街路樹、暗く薄明かりが灯る街灯の近くにある小さな公園のベンチに漆黒の髪に紫色の瞳でまだあどけなさが残る顔立ちの少女が座っていた。
「お~い、十六夜。待たせたな」
蒼色短い髪で空色の瞳の青年が走って来た。
十六夜と呼ばれた少女は青年の方を向き、
「水樹、もう終わったの?」
「ああ、橙雅たちもすぐに来るはずだ。」
水樹は十六夜の横に座り応えた。
「なぁ…十六夜。」
「ん、なに?」
「何でお前は参加しないんだよ?
俺たちの中じゃあ、お前の方が強い
お前の方が適任のはずだろ?」
「それは……」
「おお~い
水樹~十六夜~」
水樹の問いに十六夜が答えようとした時、二人を呼ぶ声が聞こえ、二人は声のする方を振り返ると焦げ茶色の短い髪の青年と紅く長い髪の少女が歩いてきた。
「焔珠、橙雅。こっちだよ」
十六夜は二人の名を呼び手を振った。
「遅くなってごめんね」
「焔珠の奴がもたついて遅くなったんだ」
燈雅は焔珠を指さし言った。
「何よ! あんただって遅かったでしょ!」
「二人とも、そのくらいで止めよ?」
十六夜が二人を宥めると二人は一応、口喧嘩だけは止めた。
「あ、もうこんな時間! そろそろ行こう?」
十六夜は時計を見ながら言った。「いいけど、何処行くんだっけ?」
「バカだな。十六夜んち行くって言ってただろ?」
「バカとは何よ!ちょっと、ど忘れしてただけでしょ!」
「……お前等、いい加減にしろ!
十六夜が困ってんだろ」
再び、焔珠と橙雅の口喧嘩が始まり掛けた時、水樹が二人を怒鳴った。
「ごめん、十六夜」
「ごめんね、十六夜」
怒鳴られた二人は十六夜の方を向いて謝った。
そんな二人を見ていた十六夜は笑顔で、
「ううん
ほら、みんなもう行こう?」
そう言って十六夜は三人を促し、公園を出た。
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