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「なあ、聞いてくれよー」
言いながら、ハジメはそれこそ椅子にするように俺へと寄りかかってきた。ふたり背中あわせ、表情は見えない。
「なんだよ」
「あれ、聞いてくれんの?」
「……お前が聞けって言ったんじゃねえか」
いつもみたいに、屋上にのぼって授業をふける。斜めに伸びた影の下、この雲とともに流れていく時間――それは俺たちにとって、教室で先生の話を聞き流すよりずっと当たり前だという気がしていた。
ここが、いちばん心地のいい空間なのだった。
「ん、まあ、ねえ。ちょっと相談ごとっつうかさ」
ぎゅうー、と背中に体重をかけ、ハジメは俺を潰しにかかる。俺はうんざりしながらもそれを受け入れ、ハジメの言葉を待っていた。
昔からの腐れ縁、ハジメの奴は、誰がなんと言おうとも――相手が聞いていようといまいと、自分が話したいことは一人で勝手にべらべら喋りだすのを、俺はよく知っている。
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