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俺は、岩壁に囲まれた海辺に座り込んでいる。
辺りには誰も居なかった。
いつもなら煩い筈の俺の周り。
しかし、今は誰も居ない。
そんな些細なことが、今漠然と寂しく感じる。
…俺には、それがどうしてなのか分からなかった。
俺は、心元無くなり辺りをキョロキョロと見回した。
もしかしたら、誰か居るかもしれない。
もしかしたら、気が付かなかっただけなのかもしれない。
そんな淡い想いを抱きながら。
夕闇の彼方から岩壁の向こうまで目を向けた。
…しかし、俺は気づいていた。
絶対に、俺以外の奴がここにいる筈が無いことを。
それは、当たり前のように。
それは、記憶してるように。
それは、絶大の自信を持って。
それが、矛盾なのに。
それが、判っているのに判っていなかった。
例えるならば、夢のような。
いつもなら絶対に異変に気付ける筈なのに、それを意識的に行うことが出来ない。
無意識な筈の俺はジレンマを感じる。
あぁ、早く誰か
早く誰か俺の前に…!!
ふと、後ろから声がした。
俺は安堵からふぅと息をつく。
さぁ、早く会いに行かなくては。
俺ははやる気持ちを抑えて小走りにその声の方へ向かって行った。…俺がこの異常を理性的に認知するのは、この一年以上後になるのだった。
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