1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
真(まこと)と初めて会ったのは、私が友達と映画を観た帰り。当時、駅周辺で歌を歌う路上ライブが流行っていて、毎晩沢山の人がギター片手に歌を歌っていた。私はそんな路上ミュージシャンが大好きで、その日も友達と別れてから門限までの時間、路上ライブを見ようと思ってふらっと立ち寄った。
少し小さめのギターに色とりどりのステッカーが張り付けてあった。ギターケースの前には自作のチラシ。だけど、肝心な歌うたいがいない…。
チラシが気になって近寄ってみると、後ろから声をかけられた。
「あっ!どーも!良かったらチラシ貰ってね!」
気さくな人だと思って一曲リクエストをお願いしてみたらすんなり歌ってくれた。
「この曲ならまかせて!」
…歌、上手だなぁ
聞き惚れていた私。
歌い終わって名前を聞かれた。
「ぁ私は優衣です。」
「俺、真(まこと)です。よろしくネ!」
…完全に好みのタイプだった。身長180センチくらい、笑うと目が細くなるかわいい笑顔をしている。
私は一目惚れだった。
真には沢山のファンがいた。どこにいたのか、いつの間にか真の周りには沢山の女の子が集まっていた。
…ファン、多いのかぁ。かっこいいもんね。
なんて考えていたら、女の子の集団から離れて、真からも離れた場所に追いやられていた。
「優衣ちゃん!もっとこっち来なよー!」
真が言うと女の子達が一斉に私を見た。すごく恥ずかしくて
「あっ私もう帰らないと…なんで」
「駅まで送って行くよ?近いけど(笑)」
真は女の子達に何か言い、私と一緒に駅まで歩いてくれた。
「どこに住んでるの?」
「…○○駅」
「割りと近いんだね!」
「…はい」
緊張していてまともに話せなかった。
「良かったらメールしてネ。チラシに書いてあるからさ!」
「…はい。」
私は完全に真に恋していた。だから舞い上がる所か「社交辞令で言ってるんだよね」とマイナスでしか受け止められなかった。
真と初めて出会った日。
すごく寒い11月上旬の夜。
最初のコメントを投稿しよう!