9176人が本棚に入れています
本棚に追加
「先……ゆず……る」
「……やっと名前で呼んでくれた」
息苦しそうに自分の名前を呼ぶ日向に、いろいろな意味で限界を感じた弦は、ようやく彼女を解放するように書棚から離れると、自らの机の横にいつものようにマル椅子を置いて、日向を手招きした。
日向は少し乱れた制服の襟元と髪を直しながらも、素直にそれに従い彼の元へと向かう。
「コーヒーでも淹れようか」
日向が椅子に座ると、代わりに弦が部屋の奥へと立ち上がった。
「ねぇ、一つ聞いてもいいかな?」
何故か妙な気恥ずかしさに下を向いたままの日向に、コーヒーカップを二つ持って戻ってきた弦が問いかける。
その弦の声に弾かれたように日向は顔を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!