秘密

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――2――  俺は、頭の何処かでこの回答を弾き出していたのだろうか? 自分でも驚く位に平常心を保っていた。 「……そーか」  何もなかったかのようにCASTERを吸う。 こちらも同じ様に、いつも通りのバニラの混じった味がした。 「飯田のそういうトコ好きよ」  変わらない態度を見て、安達は手を口に当ててクスリと笑った。  安達からその言葉を聞いたのは、これで二度目だ。  おじさんが殺された日。 どうやったかは知らないが、彼女が義理の父を殺した日。 俺が女性に初めてを捧げた日。 そして、安達と交わった最初で最後の日に言われた。  確か、俺の実家を急に訪ねてきた安達を、俺がスンナリと家に迎えたときに言われた筈だ。 「飯田のそういうトコ好きよ」 と。 「言ってよかったのか? いくら幼なじみとはいえ、俺なんかに、よっ、と」  手頃な石を足下から一つ手に取り、ソレをアンダスローで巨大な水の流れの中に投げる。 投げ方が悪いのだろうか。 やはり、石は跳ねずに沈んだ。 「言いたかったんだよね。 『王様の耳はロバのミミーー!!』って」  臀部が汚れることは気にならないようで、安達は川辺に座り片手で水を掬っては、またソレを指の隙間から垂らしていた。 「ふーん。 でも、俺がその事を警察に通報するって考えないのか?」  俺は彼女の真横に移動し、彼女を見下ろす。 幼なじみの長い黒髪は、そよ風でも簡単に靡いてしまうくらいにサラサラとしていた。 「あっ、考えてなかったわ」  芝居掛かった言葉を発し、急に立ち上がる。  あまりに唐突な出来事だったので、彼女の頭が俺の顎にぶつかりそうだった。 「じゃー、こうしよう」  彼女は川辺を駆けながら言い、俺は黒色のタイを弛めながらソレを見る。  立ち止まって、クルリと体を俺の方に向ける安達。 「秘密ね、秘密」  そう言いながら、鮮血のような口紅をした下唇を舐める彼女は、鳥肌が立つくらいに、破壊的に、そして猟奇的に綺麗だった。           END
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