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「う~ん、え~っと……」
とことこと、長い廊下に一人の少年が歩いていた。
銀の短髪にそれよりも濃い銀の瞳、低身長で華奢な身体に着ている高校生の制服を着ていないと、中学生に間違えられかねん美少年だった。
彼が今いるのはこの高校の寮であり、今は自分の部屋を見つけようと四苦八苦して探しているのだ。
しかし、三十分歩いているのに一向に部屋が見つからない。
坂峯アキト、十七歳。ただいま絶賛迷子中だった。
さらに十分探しても見つからない。
「ぐすっ……ぐすん……」
ついには泣き出し始めてしまい、曲がり角を俯きながらも曲がろうとした、すると……。
「わぷっ?」
「おっ……と」
思わずいきなり出てきた人にぶつかってしまい、アキトはぶつかってしまった人の胸に顔を埋めてしまった。
そのぶつかった人のがたいのいい身体に胸がどきんと跳ね、両肩は支えられている所からその人の熱が伝わって来た。
「大丈夫か?」
「は、はひゃい!?」
思わず抱き付いていたままだったのを思い出して、アキトはすぐに身体を離した。
そして前を見て、どきんとする。
肩まであるきれいな黒髪に、冷たそうだけどどこか優しそうな目付き。
その人に、男であるアキトは男である彼に、初めての一目惚れをしてしまった。
「(すごい……、かっこいい)」
女の子のような感想を抱いてしばらくぽけ~っと見つめていたのだが……。
「こら」
「わぎゃあ!?」
べしん!と額をいきなり叩かれて、思わずしゃがみ込んでしまう。
疑問符を大量生産しながらまた見上げると、さっき見た優しそうな顔が一変して、怖い顔をしている。
「どいてくれ、って言ったんだよ」
「え?」
「そこ、俺の部屋の前だから。入れない」
言われて、左を見てみる。
そこにあったのはいくつも見た青い扉で、さらに上を見てみると……。
神紀 沫
と、確かに在住を知らせるカードにそう書いてあった。
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