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「427号室……、427号室ってどこだろう?」
校長室であらかたの事を話終わった後、先に送ってもらっていた荷物を両手にアキトは夕方の廊下を歩いていた。
持っているのは段ボールで、『絶対見ちゃダメ』と可愛らしい赤い文字が書かれた張り紙が張られている。
実際、その中身はアキトのトップシークレットがぎっしりと詰まっており、見られてしまった終いには身投げしてしまいかねないものである。
「……神紀、沫……か」
あの時の事を思い出して、ぼっと顔を赤くした。
端正の整った顔つきに適度に伸びた顔つき。
あんな人にあそこまで近付かれて、しかもキスまでされてしまったら……。
「ひゃあああ……」
想像が妄想に変わってぐるぐると思考が早く回転してしまい、アキトは目を回して茹蛸のように真っ赤になってしまう。
「……お前なにやってんの?」
「わきゃはわぁあ!!?」
後ろから突然声をかけられ、変な奇声をあげて段ボールを落としてしまいそうになり、なんとか掴み直した。
涙目で振り返ると、そこには呆れ顔で沫が立っていた。
「こ……神紀、君?」
「本当に愉快な奴だな、お前は」
面白いものを見るように沫は苦笑を混じらせ、すぐに表情を戻す。
表情がやわらかいと人懐っこそうなものなのに、冷たい印象を与えるきつい顔が基本なのかな、とアキトは心中で首を傾げていた。
「で、今度はなにをしてたんだ?」
「あ、実はねっ、427号室っていうのを探してるんだよ。だけど見つからなくて……」
どこかで見た記憶があったのだが、アキトはそれがどこだったのかは忘れているらしい。
しかし、沫はアキトの言葉に目を丸くしていた。
「……427って」
「……、え?」
沫が前にある自分の部屋の扉を見ていて、アキトはその視線を追って振り返った。
427
金色の文字盤で、その扉にはそう書かれてあった。
「もしかして……、ここ?」
「マジかよ……」
ぽかんとしながら、二人はお互いの顔を見合った。
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