1、学園

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 沫の部屋は結構片付いていて、というよりほとんど娯楽になりそうなものがなかった。  一つの部屋で二階建てになっていて、もともと備え付けのベッドに机、本棚には勉強のための参考書があって……、それぐらいである。    コンポはあったけれど聞く曲も少なくて、しかもどれもアキトには知らないアーティストのものばかりだった。   「勝手に色々見てんじゃねえよ」 「にぁう!?」    シャツを猫掴みされて、思わず奇声をあげてしまう。   「さっさと荷物上にあげろよ。歩きにくいから」 「あ、そだね……」    もう荷物はすでに届いていたけれど、ほとんどが下に置いてあるせいか歩く隙間が狭くなっていた。   「じゃあ、まずおっきいのから……」    届いていた荷物の中でも一番大きい、私服や制服の入った段ボールを掴み、   「おい、それ業者の人が二人がかりで……」 「よいしょ」      あっさりと。      アキトの華奢な腕が、明らかに重そうな段ボールを持ち上げた。   「なっ……!?」    そして、そのままとてとてと二階に上って置いて行き、またとてとてと帰って来て他の段ボールに手を掛けた。   「……おい」 「んぅ?なに?」    不思議そうに、アキトは首をかしげて見上げて来る。  首を傾げたくなるのはこっちの方だよ。   「いや、いい」 「?……、変な沫」    そしてまたよいしょと段ボールを持ち上げる。  中身は教科書や辞書やノートで、確か沫が持ち上げようとして断念したものだ。    そのまま、さっきと同じようにとてとてと上がるアキトを見て、なんだかものすごい敗北感と、襲ったりするのは恐ろしく危険で不可能だという事を、沫は肝に命じておいた。
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