1、学園

8/11
前へ
/103ページ
次へ
 それはもう、そのまま脳が左側から飛び出すんじゃないかという一撃だった。    視界が明滅して、自分が今倒れているのか起きたままなのかも分からない。  重力に従って身体が倒れるが、その感覚が空に向かって落ちるようで気持ち悪い。  おそらく蹴りであろうその一撃を食らう直前にちらついたのは、おそらく走馬灯。    そんな事を考えていたら、今度は左側から鈍い痛みが当たった。    どうやら床に当たったらしいと分かって、そこで沫の意識が戻る。   「っ……!いったぁ!!」    ぐわんぐわんと蹴りのダメージが頭をようやく駆け巡り始めて、容赦なく蹴りをかましてきたアキトを睨み上げた。   「お前……、いきなり蹴りはないだろうが……!」 「見ようとした沫の方が悪いもん!見ないでって書いてあったのに!!」 「それは……だな……」    自分に非があるからか文句は言えず、沫はむすっとしたままそっぽを向く。    そしてそこで気付いた。   「……ちょっと待て、なんでいきなり呼び捨てしてるんだ?」    聞きまちがえるはずの無い自分の名前、だけどあってまだ一時間もしていないのに、呼び捨て?   「え?嫌だった?」 「いや、別に……。ただ、人見知りしない奴だなって思っただけだ」    頭の痛みもおさまってきて、ようやく気持ち悪い感覚もおさまってきた。   「……って、その前に謝ってよ!中身見たんでしょ!?」 「見てねえよ。……少ししか」 「見たんじゃん!!」 「あ~あ~、わかったよ。悪かった」    ころころ表情が変わるアキトに観念して、頭をかきつつ沫は素直に謝った。  言い訳するのも馬鹿らしいと思ったのだ。   「まったくもうっ……。よいしょ、と」    むくれっ面のままアキトは段ボールを軽々と持ち上げて……。      ばつんっ!どさどさどさっ!!      古くて自重に耐え切れなかったのか、箱の中身がぶちまけられた。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

556人が本棚に入れています
本棚に追加