試験

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止めかけた足を再び動かす。 念のため、強化魔術を施しておく。 「やっぱり来たね、ディル君。 真っ先に来ると思ってた。」 イリスはこちらに歩みながら笑みを浮かべていた。 この人、何か雰囲気がカレナに似てる。 「行こうか行かないか迷ったんだけど…。 やっぱ来ない方が良かったかな?」 タラリ額から汗が伝う。 イリスの周囲には恐ろしい数の魔導陣が描かれていた。 「(失敗したι)」 一瞬でこれだけの魔導陣を作り出すとは思いもしなかった。 下級魔術のみとはいえ、大した実力だ。 「ちょっと…怖い♪」 素直な感想を言う。 けど魔術で負けるわけにはいかない。 俺はイリスを上回る数の中級魔導陣を描いた。 「…さすがだね。 私はディル君が怖いよ♪」 「あははは~♪」 「…オレはそんなお前たちが怖いが。」 ニコニコと互いに笑う。 俺とイリスの巻き添えを食らいたくないのか、シューちゃんは五メートルの範囲にシールドを張った。 「魔術師なら魔術師らしく。 魅せっこしようか♪」 「受けて立ぁぁあつ!!」 魅せる魔術。 元来、魔術師とは志しを持って遊ぶ者。 別名…マジシャン。 「これはどうかな?? 『水の妖精』」 ざっと数えて80匹といったところか。 俺は知らない状態でカレナにこの魔術を教えたが、これは最上級魔術だ。 感情を持たない小さな水の妖精が沢山具現化していた。 「残念♪ 『火の妖精』」 100匹作ってみた。 イリスは少し悔しそうな表情を見せて、水の妖精を消さずに再び魔術を行使する。 「召還魔術『エルメラルダ』」 「同じく『アメジストリ』」 召還されたのは沢山の緑色の小さな物。 同じように俺は沢山の紫色の小さな物を召還する。 召還されたのは、マナの結晶。 緑色は風、紫色は雷。 マナの結晶は属性の塊だ。 それを当てれば計り知れない破壊力がある。 「じゃあこれ♪ 『水の龍』」 「なら俺はこれで!! 『火の龍』」 姿を現したのは水そのものが龍の形をしているドラゴンだ。 俺もまた、火そのものが龍の形をしているドラゴンを召還する。 このドラゴンにも感情は無い。 「……何や恐ろしい事しとるな。 ……ほい、シューちゃん。」 「……あぁ。」 隙を見てシューちゃんにハンカチを渡すカイト。 その間も、俺とイリスは魅せっこをしていた。
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