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どのくらいエレベーターも止まっていたのだろう。
そして、どのくらい市原と抱き合いキスをしていたのだろう。
好きだという俺の気持ちは、市原は全く知らないはずだし……
俺の頭の中の交錯する色々を市原が、止めた。
「おとついの日曜………タクに会ったの。」
「そうか。デートしてきたのか?」
「ううん。だって…………私………仕事で、ココ出たの10時すぎで……」
まだ止まってるエレベーターだが、大事な話をするには向いてるようだった。
「うち…………駅前通らなきゃ帰れないでしょ?」
市原の目から、涙が溢れ出す。
どうやら、駅前のファッションホテルからタクが女と出て来た所を目撃してしまったらしい。
「だからといって、俺とこんなんしちゃ………まずいだろ?」
俺は構わないけど、タクへのあてつけでされては………
「あてつけとかじゃないの…。彼氏や彼女以外としたら、なにかが違うのかなって……。」
あてつけ以外のなにものどもない………。
「知らない人じゃ………こわいもん。ケンジなら……」
「こら、俺だって何するかわかんないだろうが。」
市原は、いつの間にか泣き止んでちょっと微笑んでいる。
「あっ、やっと動いたな。」
「動いたね………」
「魔法が切れたな。ほら」
落ちているファイルを拾い俺は携帯を拾いあげた。
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