君の瞳に先輩アナザー

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  受話器の前で正座する事二時間。   ただひたすらに先輩からの電話を待つ僕は、たぶん僕の十四年の歴史の中で、一番純粋な気持ちでいると思う。   先輩は「考えさせて」と言った。後は審判が下されるのを待つのみだ。   こういう時、普通はもっとおどおどしたり、びくびくしたり、マッチ棒で家を建ててみたり、もっと情緒不安定になるものかと思っていたが、実際告白が終わってみると、鬼がでるか蛇がでるか、楽しみな気持ちの方が強いような気がする。   ……満足だ。たとえ振られる事になったとしても、僕の二年間の思いのたけを伝える事ができた。それでいい。   なんだかんだで最悪の事態を想定して保険をかけている僕は、やはり情緒不安定なんだろう。   それにしても遅いな。いっそこちらから電話をかけてみようか。   その時、今日僕の下駄箱に入っていた手紙の内容を思い出した。   『あなたのことがずっとすきでした。よかったら今夜電話ください』   白い便箋にピンクの文字で丁寧に書かれていたそれは、紛れもなくラブレターだった。   差出人は、K・Y。皮肉だと思う。よりによって僕が告白した日に告白してくるなんて。   ざわつく胸に呼応するように世界が反転し、僕の中の悪魔が顔を出した。   『先輩からの電話を待って、結果次第でかけるつもりだろ?』   違うッ!! 最初からかけるつもりなんてなかった!   『じゃあ断りの電話ぐらい入れてやれよ。告白する人間の気持ちは、今誰よりも知ってるはずなのにな。……くくっ、出来ないだろ? お前は卑怯な人間だよ』   違う違う違うッ!!   反射的に受話器をとる。僕は勢い良く、   A:先輩の番号をプッシュした。 B:K・Yの番号をプッシュした。 C:ジャパネットサカタの番号をプッシュした。
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