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近年、裏社会で囁かれる『都市伝説』がある。 『笑う死神』 心を凍らせる微笑みを浮かべる『死神』 その『微笑み』を見た者には必ず、死が訪れるという。 辰村自身は、くだらない噂だと思っていた。 その『死神』が、目の前にいた。 凍える微笑みと目が会った。 表現出来ない恐怖が、心臓を鷲掴む。 痺れが回った様に声が出ない。 目を逸らす事さえ出来ない。 『恐怖』 理性や感情ではない。 それは『根源の恐怖』 死神が一歩前に出る。 「ひぃ!」 呪縛の糸が切れた。 震える手が、執務机の引き出しから、拳銃を取り出す。 用意こそしていたが、実際に使うのは初めてだ。 決して大型とは言えないはずだが、金属の塊はズシリと重い。 自分でも驚くほど緩慢な動きで、銃を『死神』に向けようとした。 瞬間、『死神』のマントが揺れた! 何かが掠める感覚に、辰村は思わず身を竦め、、られなかった。 「っ!な?」 意に反して、体が動かない。 否、、動かせない。 渾身の力を込めて尚、 思う様に動かす事が出来ない。 …ジリッ!… 抗えない圧力が右腕にかかる。 意思に反して銃口が上がる。 ギクシャクとした動き。 目の高さに銃が上がる。 手首が返る。 銃口が、こめかみに向けられる。 目的は、明らかだ。 拳銃を離さなければ。 辰村の意思に反して指は動かない。 銃口がこめかみに押し付けられる。 「や、、やめ、、」 せめて頭を逸らそうとするが、押さえ付けられているように動かない。 「た、、たすけ、、」 そこに『一国の王』と比肩すると評された男の威厳は無かった。 『死神』が右手を目許まで上げる。 一呼吸。 指を鳴らした。 銃声が重なった。 そして、、、壁の時計の長針がカチリと12時を指した。
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