6人が本棚に入れています
本棚に追加
近年、裏社会で囁かれる『都市伝説』がある。
『笑う死神』
心を凍らせる微笑みを浮かべる『死神』
その『微笑み』を見た者には必ず、死が訪れるという。
辰村自身は、くだらない噂だと思っていた。
その『死神』が、目の前にいた。
凍える微笑みと目が会った。
表現出来ない恐怖が、心臓を鷲掴む。
痺れが回った様に声が出ない。
目を逸らす事さえ出来ない。
『恐怖』
理性や感情ではない。
それは『根源の恐怖』
死神が一歩前に出る。
「ひぃ!」
呪縛の糸が切れた。
震える手が、執務机の引き出しから、拳銃を取り出す。
用意こそしていたが、実際に使うのは初めてだ。
決して大型とは言えないはずだが、金属の塊はズシリと重い。
自分でも驚くほど緩慢な動きで、銃を『死神』に向けようとした。
瞬間、『死神』のマントが揺れた!
何かが掠める感覚に、辰村は思わず身を竦め、、られなかった。
「っ!な?」
意に反して、体が動かない。
否、、動かせない。
渾身の力を込めて尚、
思う様に動かす事が出来ない。
…ジリッ!…
抗えない圧力が右腕にかかる。
意思に反して銃口が上がる。
ギクシャクとした動き。
目の高さに銃が上がる。
手首が返る。
銃口が、こめかみに向けられる。
目的は、明らかだ。
拳銃を離さなければ。
辰村の意思に反して指は動かない。
銃口がこめかみに押し付けられる。
「や、、やめ、、」
せめて頭を逸らそうとするが、押さえ付けられているように動かない。
「た、、たすけ、、」
そこに『一国の王』と比肩すると評された男の威厳は無かった。
『死神』が右手を目許まで上げる。
一呼吸。
指を鳴らした。
銃声が重なった。
そして、、、壁の時計の長針がカチリと12時を指した。
最初のコメントを投稿しよう!