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「むーっ!!
やる事は色々あるんですからね!!」
「ほぉ?たくさんあるんですかぁ?
例えば何が?」
大仰に驚いてみせる様子が何ともわざとらしい。
「た、、例えば、、
この間届いた、書籍の分類とか、、
管理カードの貼付け、、とか、、」
「あぁ?なんだぁ!そんな事ですかぁ!」
「そんな、、って!
結構大変じゃないですかぁ!!」
「終わってますから。
それ。」
「え?」
直江のごくさりげない一言に、さくらは思わず絶句した。
「お、終わった?
いつの間に?」
「昨日の午後から始めまして、午前中には終わりましたよ」
そーいえば午前中あんまり見掛けなかったよーな、、、。
でも、、。
「本当ですか?」
普段から笑っている様な細い目を、更に細めながら、さくらにニッコリ微笑みかける。
「えぇ。それが何か?」
普段から、どこから本気で、どこからが冗談なのかわからないタイプである。
「え、や、、でも」
先日入って来た書籍は300冊強。
分類して、管理シールを貼り、蔵書印を押す。
書籍の種類によっては、その前に、表紙に保護シートを貼らなければならない。
これがかなり手間がかかるのだ。
通常業務の合間の作業とはいえ二、三人で通常三日程かかる。
にわかには信じがたい。
「あぁ?木村さん、、疑ってますねぇ?」
悪戯っ子の表情。
「まぁ、これ、チェックしといて下さい。」
直江から渡された紙束を見る。
「!」
『分類明細』
さっと見ただけで冗談の類ではない事がわかる完成度だ。
「これで問題ないですよねぇ?木村さん?」
さすがに、こんな物を見せられては文句など言える筈もない。
「じゃ!そーゆー事で!
!」
直江は、そのままクルリと背を向けてしまう。
「あ!?ちょ、、直江さん!」
「あぁ、木村さん!
『あなたの』お客様がお見えですよ」
「え?」
思わずカウンターの方に目を向けるが、誰もいない、、と思った瞬間!
「さくらおねぇちゃん、こんにちはっ!!」
元気いっぱいの、なんとも可愛らしい声が挙がった。
近所の小学生
『増田まお』
(ますだ・まお)ちゃん
ほとんど毎日、学校帰りには、ここに立ち寄る小さな常連さんだ。
小学三年生、、にしてはかなり小柄な彼女は、受付カウンターの高さとほぼ等しい。
少しでもカウンターの奥にいると完全にその死角に入ってしまう。
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