そして恋の戦鐘は鳴り響く。

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「ふう・・・。なんとか完成したけれど」 紅魔館・厨房。 そこでは料理を作り終えたパチュリーが、ある物を見つめていた。 「結局、これだけね。まともに作れたのは・・・」 テーブルの上には、皿に乗った不格好なおにぎりが3つ。それだけだった。 無論、パチュリーとてわざとおにぎりだけにしたわけではない。 本を片手に、慣れない手つきでいくつかの料理に挑戦してみた。 ・・・結果、 から揚げは焦げ茶色の塊になり、卵焼きはなぜかぐちゃぐちゃ、野菜炒めは炭と化していた。 消去法で、唯一まともに出来たおにぎりだけ残ることになったのである。 「まさか自分がここまで料理下手だったとはね・・・誤算だったわ」 (なんて、冷静でいられる「料理下手」のレベルじゃないと思うんですけど・・・) その様子をしっかり目撃してしまったのは、小悪魔だった。 戻って来てから、弁当を作るなら厨房だろうと、こうして首尾を報告しにやってきたのだが・・・ (こ、これは、見なかった事に・・・) 「で、どうだったの?小悪魔?」 「あ゛」 ばれてました。 「・・・で、魔理沙は博麗神社に?」 「はい。お腹空かせてらっしゃいましたよ」 パチュリーは椅子に座り、おにぎりを一つずつ丁寧に弁当箱に詰めながら、報告に耳を傾けていた。 ちなみにパチュリーの料理の件は話の最初に、 『パチュリー様、その料、』 『それで、魔理沙は何て言ってたの?』 『あ・・・』 華麗にスルーされていた。 「博麗神社か・・・。霊夢がいるといろいろ厄介ね・・・」 何とか魔理沙と二人きりで話したいパチュリー。どうしたものかと思っていると、 「あ、霊夢さんならいらっしゃらないようでしたよ」 「あら、そうなの?」 それは好都合だった。 どんな理由で外出しているかはともかく、それならば霊夢が帰宅する前に事を済ませるべきだ。 そう判断したパチュリーは弁当箱を素早く花柄の巾着袋に入れ、厨房を出た。 そして、玄関前。 「それじゃ、行ってくるわ」 そう小悪魔に告げたパチュリーの顔は、今までにないほど、決意に満ちていた。 「はい! ・・・パチュリー様、ご武運を!」 「ふふっ、大袈裟ね。戦いに行くわけじゃないのよ?」 そういうとパチュリーは、外へ駆け出していった。 ・・・小悪魔の言葉の本当の意味を理解しないまま。 「・・・いえ、これでいいんです。恋は本当に、戦いなんですから」 小悪魔は一人、すでに届かない言葉で彼女の勝利を祈った――
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