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一方、
マーガトロイド邸・キッチン。
「・・・よっし、完成ね」
こちらもアリスがちょうどサンドイッチを作り終えた所であった。
すると、
(トントン)
窓を叩く小さな音。
「あら上海。お帰りなさい」
そう言うとアリスは窓を開け、人形――魔理沙の元へ遣わせていた上海人形――を家の中へといれてやった。
(ペコリ。・・・!)
アリスに一礼をした上海の目に飛び込んできたのは、色鮮やかなサンドイッチ達であった。
ハムにタマゴにツナにジャム。四種類のサンドイッチが並べられている。
どれも美味しそうで、とても料理経験のない者が作ったとは思えない出来栄えだった。
「どう? 私がやる気になれば、これくらい簡単なのよ」
自慢げに胸を張る主人であったが、その後ろをふわふわ浮遊している他の人形達は、苦笑いを浮かべていた。
(?)
上機嫌でサンドイッチをバスケットに詰める主人を尻目に、何かあったの? と仲間に尋ねる上海。
すると、
(・・・)
実は・・・と、蓬莱人形が説明してくれた。
・・・なんでも、アリスの料理センスは想像以上に酷かったらしく、キャベツとレタスの区別が付かない所から始まり、以前香霖堂で入手した「電子れんじ」でゆで卵を作ろうとして破裂させたり、マスタードの分量を間違えて超激辛ペーストを作成したりと、それはもう見るに堪えない物だった。
そこで、人形達が総出でサポートし、やっとの思いで完成させたという。
実質、アリスが手掛けたのは20%ほどらしい・・・。
(・・・・・・)
なるほど、と上海は思った。
それならあの完成度の高さも納得できる。
・・・お疲れ様、みんな。
(・・・・・・)
上海を除く人形達は皆、笑顔で涙を流していた・・・。
「博麗神社か・・・うーん・・・」
上海の報告を受けたアリスは、唸っていた。
「いくら霊夢が留守とはいえ、人目に付く可能性がないとは言えないわね・・・」
事が事だけに、ムードは大事にしたい所だ。
もし告白の最中に人が来たりでもしたら、目も当てられない。
(・・・)
上海が心配そうに見つめる中、アリスは覚悟を決めた。
「ま、どこでもいいって言ったのはこっちだしね。どこだってリスクは大差ないわ」
そう自分に言い聞かせると、アリスはバスケット片手に外へ出た。
「じゃあ貴女達は留守番しててね。良い知らせを持って帰ってくるわ」
そう言って飛び立つアリスの背中を、人形達は礼で見送った。
そして、音無き声で語りかける。
行ってらっしゃいませ、御主人様。
吉報をお待ちしています、と――
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