そして恋の戦鐘は鳴り響く。

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さて、ここで一人の人物が登場する。 「・・・うーん、どこかにいいネタありませんかねぇ」 空高く飛び回り、カメラ片手に忙しく何かを探しているのは、『文々。(ぶんぶんまる)新聞』の記者、鴉天狗の射命丸 文(しゃめいまる あや)であった。 記者である彼女が捜し求めているのはもちろん、一面記事で読者を沸かせることが出来る特ダネ。つまりスクープだ。 「やっぱり読者の皆さんが盛り上がるネタっていったら・・・色恋でしょうかねぇ?」 昔から人々というものは、他人の色恋沙汰には興味をそそられるものだ。 『〇〇と△△、熱愛発覚!?』などという見出しが一面に躍れば、注目度は確実に上がるのだろうが・・・ 「そんなに都合の良い話があるわけ・・・ん? あれは・・・」 地道にネタを集めようと踵を返そうとした文の目に、二つの人影が僅かに写った。 「パチュリーさんに、アリスさん・・・ですよね」 文はファインダー越しに二人の姿を確認した。 二人はそれぞれ、巾着とバスケットを手に持っていた。ちょうど軽食が入りそうな大きさである。 「お二人でピクニック・・・? あのお二人、そんなに仲良しでしたっけ・・・」 二人の距離は離れており、このまま遭遇することはないだろうが、二人はまったく同じ方角に向かっていた。 その先には・・・ 「・・・博麗神社?」 確かに二人はそれぞれ神社に向かっているようだ。 神社の境内にカメラを向けた文は、そこにある人影のような物を見つけた。 すぐさまレンズの倍率を高くして境内へとズームし、それを確認する。 その人影に、文は面識があった。 そしてそれを確認した瞬間、 「あれは・・・魔理沙さんですね。・・・ん? あれっ・・・これって、もしかして・・・!?」 ――文の中で何かが繋がった。 文は日頃から、一度入手した情報は瑣末な事でも全て記憶しておく事にしている。何かがとんでもないスクープに繋がっているかもしれないからだ。 そしてもちろん、パチュリーとアリスが魔理沙に片思いしているという事も、ある筋から入手していた。 (淡い恋心、料理のような手荷物、二人が今から向かう場所、そしてその場所で待っている人物・・・!) これだけの情報が集まった今、文のブン屋としての直感は、唯一絶対の結果を示した。つまり―― 「――すっごい大スクープの予感っ!!」 嬉しそうにそう叫んだ途端、文は猛スピードで博麗神社に向かっていた。 「特ダネスクープ、撮影(シュート)しちゃいますよ~っ!!」
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