或る二人の思惑。

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時間を少々巻き戻して、紅魔館内、図書館。 その中で、机に突っ伏している少女が一人。 「・・・・・・はぁ・・・」 彼女はパチュリー・ノーレッジ。 この紅魔館(というよりほぼ図書館)に住む少女だ。 知識が豊富で、魔法の腕前も一級品なのだが、ほとんど外出する事がないため、身体能力の方はお世辞にも良いとは言えない。 そんな彼女だが、ただ今悩み事の真っ最中であった。 (・・・最近、魔理沙・・・あまり来ないわね・・・) この図書館には古今東西の様々な書物が保管されており、魔法使いにとって有益な魔道書の類も当然その中に含まれる。 その魔道書を読みに(稀に無断借用しに)訪れていたのが魔理沙である。 『なぁ、これ読ませてもらってもいいか?』 『・・・別に構わないわ。好きにすれば?』 『へへっ、サンキュ』 『・・・・・・』 最初は、静かな時間に割って入って来た魔理沙を、疎ましく思っていた。 しかし、何度も同じ時間を過ごすにつれ、違う感情が芽生えてきていた。 二人で静かに本を読む。たったそれだけの時間。 でも、魔理沙が何か興味深い内容を見つけた時の、子供のような笑顔を見ていると、何だか温かな気持ちになる。 そして、魔理沙が来なかった日は、何故か少し、胸が苦しくなる――。(どうしたのかしら、私・・・) 自分でもよくわからない。 この気持ちの正体は何? まさか、これが―― 「・・・わからない。けれど」 この気持ちを確かめるため、魔理沙に会わなければならない事はわかった。 その為には、待っているだけでは駄目だ。 時計を見ると、時刻はあと一時間ほどでお昼時。 「・・・お弁当でも、作ってみようかしら」 会うにしても何か口実が必要だ。 お昼を一緒に過ごすというのは、実にタイムリーなアイディアである。 そうと決まれば、のんびりしてはいられない。 「お料理の本、探してこなきゃ・・・と、そうだわ。小悪魔ー、いるー?」 「は~い、何ですかパチュリー様~?」 お弁当を作ったとしても肝心の魔理沙が食事を済ませてしまっていては意味が無い。 そこでパチュリーは小悪魔にある頼み事をした。 「魔理沙に伝言を頼まれてほしいの。『今日はお弁当を持って遊びに行くから、一緒に食べましょう』って。お願いできる?」 「もちろんです! それじゃ早速行ってきますね」 そういうと小悪魔は、すぐに窓から飛び去っていった。 それを見送りパチュリーは、料理の本を片手に厨房へと駆け出していった。
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