或る二人の思惑。

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そんな魔理沙とは裏腹に、 「はぁ・・・」 (・・・・・・) 人形と小悪魔の二人は暗い表情を浮かべながら、ふわふわと帰る途中だった。 「まさか魔理沙さんがあそこまで鈍感だなんて、思いもしませんでした・・・」 (コクコク) 二人とも、魔理沙の鈍さにはほとほと呆れていた。 今まで幾度となくアリスやパチュリーと接してきているのだから、二人の態度に違和感を感じ、そこから想いを計り知る事は可能だろう。 無論、完全に知る事など誰にも出来ないが、少しくらい察していてもおかしくはないはずである。普通なら。 よりによって魔理沙はその普通ではない例外というわけなのであった・・・。 「・・・報われるんでしょうか。パチュリー様も、アリスさんも・・・」 (・・・・・・) 一抹の不安が過ぎる。 あの二人の気持ちに、何とか気付いてもらいたい。 その為ならば、自分達は何だってしてみせる。そういう気持ちだった。 だが、これ以上出来ることはない。 他人の色恋に首を突っ込むなど、不粋以外の何物でもない。 それにこの想いは、本人が伝えなければならない、尊い想いだ。 その尊さを、自分達の勝手でどうして消し去る事が出来るだろう―― 「・・・あとは、ご本人達に頑張ってもらうしか、ないですよね?」 (・・・コク) 私達は静かに見守ろう。そして、どのような結果になるにせよ、精一杯祝福しよう―― そう心に決めた二人は、いくらか重荷が取れたような思いだった。 が、しかし。 思い出してしまった。もう一つの大きな決断を・・・ 「・・・と、ところで、あのお二人が同じ目的で鉢合わせになるって事・・・伝えます・・・?」 (・・・ぶんぶんぶん!) 左右に激しく首を振り、全力で否定する人形。 「で、ですよね? 伝えたりなんかしたら・・・」 (・・・ガタガタガタガタ・・・) 確実に、どちらともなく乗り込んでいくことだろう。――最大級の戦闘用意をして。 そんな事になれば辺り一面はどうなるか。そして何より、巻き添えを喰らうであろう自分達は・・・ 「・・・うぅぅ・・・想像したくもないですぅ・・・」 (ブルブルブル・・・) ならば、何も告げずに普段通りのまま遭遇してもらえれば、被害は最小限に・・・なってほしい。そう願いたい。 「に、人形さん! 絶っっっ対に言っちゃダメですからねっ!?」 (コクコク!) こうして二人は固く誓い合い、それぞれの住み処へ戻っていくのであった。 ――この決断が、二人に地獄を見せることになるのは、また別のお話である・・・。
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