グッバイ・カゴシマ

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 移送になった先は、鹿児島刑務所だった。ここで基本的な訓練をするらしい。行進の手の振り方、会話をする時の手続き、食器の重ね方などなど。  移って来た時、10人くらいいたが、ボク以外は観察工場に配属された。観察工場は、作業や集団生活に対する適性を見る為に、新人を集めて軽作業をさせながら、素行を観察する場所である。ここでの結果をもとに、様々な工場へ分類される。ちなみに刑務所で『工場』と言うのは、受刑者が働く場所の総称で、とくに何かを作っている場所をさすわけではない。  「お前は、こっちな」 ひとり扱いが違うというのは、なんだかイヤーンな感じ。しかも、ここも満杯状態らしく、入れられた部屋は、独居なんだけど、問題児を集めた棟。ケンカして取り調べ中とか、粗暴だとかでね。  部屋に入ると、警務官が小声で言った。 「ここはツマらんのばかりしかおらん。くれぐれもマネすんな」  たしかにマネしたくない。隣りの部屋は一日中なにか話してる。携帯電話でもあるのかな?
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