グッバイ・カゴシマ

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 再び移送になる日が来た。朝ご飯を早めにすませ、いったん私服に着替えたボクは、もう一人の私服の受刑者と、これまた私服の警務官2人と、白い乗用車に乗り込んだ。  「一人は福岡刑務所におろすから…」  ということは、福岡経由大分行きかぁ。  福岡刑務所の敷地内に止まると、ちょうど昼食の準備らしく、炊場(すいじょう。受刑者の食事を作る工場)がゴミだしをしていた。  車内で3人になって、しばらく走った時、なんだか大分行きでない車線に入った気がした。 「あのぉ…大分じゃないんですか?」 「え!聞いてないの?」 助手席の若い警務官は、運転中のもう一人の顔を見た。別に言って構わないですよね?と目で問い掛けている。 「お前はな、北九州に行きます。そこで皆の世話をする係に選ばれたんだぞ」  微妙な心境。なんで北九州なんだろ?そう言えば、飲酒運転で懲役に来てた奄美大島の人は、神奈川に送られてたなぁ。どこも過収容だしなぁ。  ほどなく刑務所に着いた。自動車が敷地内に入る瞬間に看板を見たが、一瞬すぎて、よく読めなかった。  なんか『医療』とか書いてあった気がする。
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