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「7時からのプレゼンに間に合いそうですか?」
まぁ無理だろうなぁ。白いワンボックスの中、ボクの周りを囲んでいる男たちがそれを許しちゃくれまい。ついさっきまで、一緒にテレビCMのプレゼン準備をしていた彼は、予期せぬ逮捕をされたボクにノー天気な電話をかけて来た。
どのくらいかかるかなぁ…。
さすがに、すぐには帰れない事を覚悟していたが、再びここに帰るまで3年もかかるとは、この時は考えていなかった。いまは夕方の5時半くらい。鹿児島弁で話す刑事たちに連れられ、近場の地元警察署に入った。
否認はしない。潔く認めた。当時、悪い仲間とのしがらみの中で生きていたボクは、心のどこかで、こうなる事を望んでいた気がする。FAXで届けられた逮捕状を見せられ、時間を告げられた時、なんだかスッとした気分になった。
これで楽になる。
変な話だがホントにそう思った。1年前に風俗店の名義人として、懲役2年執行猶予3年の判決をもらっていたボクは、今度は実刑を食らうはず。だけど前回も今回も、周りにいた仲間は同じ。ボクは口を割らなかった。だけどそんな中では、どうせまともな生活は帰ってきはしない。繰り返すのがオチだ。現にこうして2度目の逮捕をされてしまった。自分の悪行を人のせいにする気はない。だが、しつこくまとわりつく仲間から離れないと、何も変われはしない。ヤツは、当然だか、ひどく警察を嫌う。もちろん面会にもこないだろう。こんどこそ絶縁できるかもなぁ…。
鹿児島に向かう高速道路で、そんな事ばかり考えていた。
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