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「お前はカレーが好きらしいな」
お前の事はなんでも知ってるぞと言いたいのだろう。ボクの取り調べは、このセリフから始まった。
刑事の対応は、最初は高圧的だった。そりゃそうだな。しかし日がたつにつれ、しだいに柔らかくなっていった。
困ったのは言葉の問題。鹿児島弁は難しい。いちいち聞き返すのに疲れたボクは、なんとなく苦笑いしながらうなずく事が多くなった。
当時、新しい犯罪だったこともあり、県警は力が入っていたようだ。新聞の扱いも大きい。
取り調べができる最大の期間は決まっているので、その日が来るとボクは釈放された。とはいっても、4階の留置管理課のドアを出ると、エレベータの前に手錠を持った刑事が待ってて、別の罪状で再逮捕。これでまた期限最大まで取り調べができるのだ。
拘置所がいっぱいなのもあって、結局、4か月も留置所生活を送る事になったが、たくさんの人が面会や差し入れに来てくれた。普段おとなしい格好の女性が、元気づけようとド派手なメイクで来てくれたり、のちに東京都知事選に出ることになった男性は、透明の仕切りの向うで、最近出した本の解説をしてくれた。みんな優しいなぁ。
そうそう、逮捕された日のプレゼンも何とかなったらしい。よかった。
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