グッバイ・シャバ

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 拘置所に来ると、かなり刑務所っぽい。空気もそうだけど、いろいろとルールが厳しくなってくる。それでも刑務所にくらべれば、遊園地のようなものだが、それを知らない人間にとっては、ひどく厳しく感じる。  ここにくると、「雑役(ざつえき)」が居る。彼らは受刑者である。そして、受刑者や被告人など、収容者の生活の世話をするのが彼らの仕事。  懲役は、懲らしめる為に働かせる罰であり、決して閉じ込めておく罰ではない。だから、すべての懲役の受刑者は、なんらかの職業を割り当てられる。一応、本人の希望は聞かれるが、分類審査会で個人の適性を見て割り振られる。 「どの仕事が楽ですかねぇ」 懲役の経験者がいると、そんな質問をよく耳にした。普段20時間近い労働をしていたボクは、その話題にまったく興味が無かった。そんな過酷な労働は、刑務所には無いだろうから。  ただ、早く出たいなという希望はあった。懲役には仮釈放という制度がある。受刑中の態度が評価されると、早く釈放されるのである。また、審査が厳しい仕事につけば、仮釈は多くもらえる。雑役は、そのトップクラスだ。ま、ムリだろうけど。  裁判も回数を重ね、拘置所生活も3か月ほどになった時、なぜか所長に呼び出された。 「どうだ?今回は(刑務所に)行きそうか?」 「はい。そうなると思います」 「お前は、刑務所は初めてか?」 「はい」 「組関係との付き合いはないか?」 「ないです」 「よし、お前を雑役で使ってやる。問題を起こさん様に注意しとけよ」 「はぁ」  リアルには感じなかった。まだ判決も先だし、拘置所の所長にそんな権限あるんだろうか?単に、収容が長引いてるストレスで、ケンカなどのトラブルを起こさせない為の飴玉なんだろうか?だけど、いったん聞かされると、なかなか離れなくなるセリフだなぁ。
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