あいつが来た

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六匠高等学校。   その高校の生徒会長である高杉清羅(男)は、成績優秀、冷静沈着、何をやらせてもパーフェクトな男として知られている。   今日も今日とて、生徒会室にてお仕事中であった。   書類に走るシャープペンシルの音のみ聞こえる静かな部屋。   普通の生徒なら三時間目の授業を受けているところだが、彼の場合、特例として授業免除になっている。   しばらくシャープペンシルを動かしたところで、その手が止まった。     「…終わった…」     疲れから、溜め息が一つ出た。   書類を整え、机の脇に寄せる。   生まれつきの綺麗な黒髪をかきあげて天井を仰ぎ見ると、彼の透き通った茶色い目が見開かれた。   そして叫ぶ。     「何してるんだ貴様はああぁぁ!!!」     生徒会室に響く声。   天井には一人の少女が逆さまに突き刺さっていた。   茶色い髪が、重力に従って垂れている。     「はぁい、清羅ちゃん♪」   「ちゃん付けで呼ぶな!何してるかと聞いているんだ!那智!」   「清羅ちゃんをストーキングしてました!」   「素直過ぎるだろ!ってか何故天井に刺さってたんだ!」   「いや、それがさ…清羅ちゃんにまともに会いに行っても相手にされなさそうだから、ちょっと変わった会い方しようと思って天井に忍び込んだら天井抜けた」     天井から自力で脱出して、清羅の前に立つ。     「公共物破壊するなよ。生徒会長泣くよ?」   「やーい、泣け泣け!へぶらっ!!」     清羅の右ストレートが那智の腹に決まった。   え?女子に対して酷い?   那智は女子じゃない…ゴリラです。
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